最近、健康診断で「かくれ脳梗塞」という言葉を耳にし、不安に感じた方もいるかもしれません。その名のとおり、外からはわからない「隠れた脳梗塞」のことで、誰にでも起こり得る脳梗塞です。

 

健康診断や脳ドックでMRI検査を受け、「かくれ脳梗塞があります」と言われたら「これから脳梗塞になる可能性が高いということだろうか」「治療は必要ないのだろうか」と不安になる方も多いでしょう。

 

この記事では、かくれ脳梗塞の症状や治療について、そして気づかずに放置することで起こり得るリスクを詳しく解説します。また、MRI検査で発見できるほかの脳の病気についてもお伝えしています。必要な対策を知り、将来の健康を守りましょう。

 

 

かくれ脳梗塞は検査で偶然見つかる

 

かくれ脳梗塞とは通称で、正式には「無症候性脳梗塞」と言います。無症候性脳梗塞は、「CTやMRI画像上で偶然脳梗塞が発見され、脳梗塞による脳血管性発作の既往や神経症状も認められない状態」と定義されています。2)

 

 かくれ脳梗塞の症状

脳梗塞では、脳の血管が詰まって脳の血流が低下することにより、意識障害や身体の麻痺、言葉が出にくい・理解しにくい、感覚障害などのさまざまな神経症状がみられます。

 

しかし、かくれ脳梗塞では脳梗塞による神経症状はみられません。無症候性という言葉が示すとおり、自覚症状がないため、自分では気づくことができないのです。

 

 かくれ脳梗塞が検査で見つかる割合

ある調査では、脳ドックを受けた人(脳卒中の既往もなく、神経症状もない人)における、かくれ脳梗塞の割合は13.7%でした。年代別にみると、40歳代からかくれ脳梗塞がみられはじめ、加齢とともに見つかる割合は増えていきます。60歳代以上では20%、70歳代以上では30%に達する結果です。3),4)

 

 

 かくれ脳梗塞を放置してはいけない理由

かくれ脳梗塞は無症状ですが、放っておくと危険な状態となる場合があります。健康診断などで指摘された場合にそのままにしていると、脳卒中や認知症の発症リスクが高まります。

 

 脳卒中を発症するリスク

かくれ脳梗塞が認められるグループと認められないグループを比較した調査によると、かくれ脳梗塞があるグループの脳卒中年間発症率は0.28%であるのに対し、ないグループでは2.8%でした。4)かくれ脳梗塞があると、約10倍も脳卒中を発症する確率が高くなるのです。

 

脳卒中を発症すると、意識障害や半身麻痺、言語障害、認知機能低下などの症状が現れます。後遺症が残るだけでなく、死亡率も高いので、発症する前の予防が肝心です。

 

 認知症になるリスク

 

かくれ脳梗塞が認められる人では、もの忘れを自覚する人が多いという報告があります。4)また、ロッテルダム研究では、認知症のリスクが2倍以上になったと報告7)されています。

 

かくれ脳梗塞は脳卒中の発症リスクが高くなるだけでなく、認知機能の低下にも影響するのです。

 

 かくれ脳梗塞の治療

検査でかくれ脳梗塞が見つかった場合は、まず、かくれ脳梗塞を起こした要因を把握し、その要因に対する治療が重要です。

 

かくれ脳梗塞の大きな要因となるのは高血圧です。高血圧の人と正常血圧の人で、かくれ脳梗塞がみられる割合を比較すると、高血圧の人は47%、正常血圧の人は33%にみられ、高血圧の人の方がかくれ脳梗塞を起こしやすいことがわかっています。3)

 

高血圧に次いで、脂質異常症、糖尿病による頸動脈の動脈硬化もかくれ脳梗塞を起こす要因として挙げられます。5)心房細動患者に高い確率でかくれ脳梗塞が発見されることも明らかになっています。6)

 

ここからは、かくれ脳梗塞を起こすおもな要因に対する治療について説明していきます。

 

 高血圧に対する治療

降圧薬による治療で、かくれ脳梗塞の数の増加を抑えることや脳梗塞の発症を予防できることが報告されています。4)

 

 脂質異常症・糖尿病に対する治療

脂質異常症や糖尿病がある方には、運動療法や食事療法、薬物療法、生活上のアドバイスなどを行います。動脈硬化の進行の予防により、かくれ脳梗塞や脳卒中の発症リスクの軽減が期待できます。

 

 心房細動がある方に対する治療

心房細動がある方は、脳塞栓症のリスクが高まるため、心エコー検査で塞栓を確認し、必要に応じて抗凝固療法を行うことが重要です。

 

脳内微小出血にも関係

脳内微小出血は、かくれ脳梗塞と同じように症状はなく、脳の血管外に漏れ出したわずかなヘモグロビンがMRI検査で確認できるものです。脳内微小出血が認められる場合は平均血圧が高く、無症候性脳梗塞の合併も多いことが報告されています。8)

 

脳内微小出血がみられるのは健常な人では5%に対し、脳出血患者では約60%、脳梗塞患者では約35%に認められました。8)検査後に平均3.6年追跡した調査では、脳卒中の発生率が高かったと報告されています。9)

 

脳内微小出血もかくれ脳梗塞と同様に高血圧がリスク要因となるため、かくれ脳梗塞や脳内微小出血を起こさないためには高血圧の予防が重要です。

 

かくれ脳梗塞は検査が重要

 

脳卒中の発症や認知機能の低下を起こすかくれ脳梗塞は、MRI検査で確認できます。定期的な検査を受けることで、将来、脳卒中を起こすリスクを低減し、健康維持につながります。

 

MRI検査は、かくれ脳梗塞以外にも、次のような病気や症状の発見が可能です。定期的なMRI検査で脳卒中などの危険な脳の病気を予防しましょう。

 

・未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)

・脳腫瘍

・頸動脈の狭窄

・微小脳出血(びしょうのうしゅっけつ)

 

 

 MRI検査でかくれ脳梗塞と脳卒中を早期発見

MRI検査ではかくれ脳梗塞の発見と現在起こっている脳卒中や脳の異常を早期発見できます。

 

大阪市城東区の「いわた脳神経外科クリニック」では、予防のための脳ドッグMRI検査(自由診療)のほか、いつもと違う頭痛などの症状があったときにおこなう即日MRI検査(保険診療)にも対応しています。

 

脳卒中の予防や気になる症状がある場合にMRI検査をご希望の際はご相談ください。

 

※MRI検査における副作用・リスク

・心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、人工内耳、可動性義眼、神経刺激装置、骨成長刺激装置、インシュリン注入ポンプを装着している方、体内に移動可能な金属を挿入している方は検査を受けられません。

・閉所恐怖症、妊娠中・妊娠の可能性のある方、磁石を使用した義歯などを使用している方などは検査前にご相談ください

 

※費用・時間

脳ドッグ(自費診療) 費用 15000円 検査時間 約30分

保険診療 健康保険証使用 3割負担 7000円 検査時間 約15分

 

 ※MRI検査の流れ

 

 

 

おすすめ

 

・かくれ脳梗塞を放置していけない!認知症リスクも高める隠れた脳の脅威

・脳卒中予防のための生活習慣病管理のポイントと家庭でできる予防対策

 

参照URL

1)厚生労働省 令和2年(2020)患者調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/index.html

2)澤田 徹Ⅰ.無症候性脳血管障害とは―その定義と診断基準-日本内科学会雑誌1997 86(5)p725-732

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/86/5/86_5_725/_pdf

3)小林 祥泰 無症候性脳梗塞の臨床的意義 日本内科学会雑誌1995 84(6)p960-964

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/84/6/84_6_960/_pdf

4)山口 修平 無症候性脳梗塞の予後と対策 脳卒中 2004 26(4)p.661-664

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/26/4/26_4_661/_pdf

5)KAKEN 2004年度年次研究報告書虚血性脳血管障害の発症予防に関する研究-無症候性脳梗塞の意義と対策-

https://kaken.nii.ac.jp/en/report/KAKENHI-PROJECT-15390278/153902782004jisseki/

6)高嶋修太郎ら 心房細動における無症候性脳梗塞の検討 脳卒中 2000 22 p.576-580

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/22/4/22_4_576/_pdf/-char/ja

7)Sarah E Vermeer et al Silent brain infarcts and the risk of dementia and cognitive decline The New England Journal of Medicine 2003 348(13)p.1215-1222

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2326846/

8)高橋若生ら 無症候性脳内微小出血陽性例の臨床的特徴 脳卒中2004 26 p.357-363

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/26/2/26_2_357/_pdf

9)Hirokazu Bokura et al Microbleeds are associated with subsequent hemorrhagic and ischemic stroke in healthy elderly individuals Stroke 2011 42(7)p.1867-1871

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21597015/

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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