「脳卒中になると、最初にどのような症状が現れる?」

「どのような経過をたどるの?」

など、脳卒中の発症時の様子や症状の経過が気になる方も多いでしょう。

 

本記事では脳卒中を発症したことのある有名人を例に挙げ、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血それぞれの発症時の様子や症状の経過を解説します。有名人の方々の実例を通して、脳卒中の理解をより深められるでしょう。

 

脳卒中は命にかかわる病気です。発症要因となる生活習慣病の見直しとともに、脳の状態を調べられるMRI検査を受けて早期発見・早期治療につなげましょう。

 

脳卒中は誰にでも起こり得る病気

脳卒中は、誰にでも起こり得る病気であることをご存知でしょうか。

令和2年(2020)患者調査によると、脳卒中の総患者数は146万2,000人(くも膜下出血6万2,000人、脳出血20万1,000人、脳梗塞119万9,000人)です。1)脳血管疾患174万2,000人のうち、約84%を脳卒中が占めています。1

 

また、令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)では、日本人の主な死因は「がん」「心疾患」「老衰」に次いで4位であることが報告されています。

 

さらに、2022(令和4)年国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因の第2位は脳血管疾患(脳卒中)であり、重度の介護(要介護4・5)に限ると第1位です。2

 

このように、脳卒中は多くの人が経験し、命にかかわることや重度の介護が必要になることもある病気です。3

 

脳卒中を経験した有名人・著名人

脳卒中を経験した次の3名の有名人・著名人を例に挙げ、発症時の様子や症状の現れ方を解説します。

 

  • 長嶋茂雄さん(脳梗塞)
  • 河合美智子さん(脳出血)
  • KEIKOさん(くも膜下出血)

 

3名の方々は、脳卒中の後遺症により、身体の麻痺や記憶障害、言語障害などの症状がみられました。いずれの方も、異変が起きてから早い段階で処置に移行できたため、その後は回復の方向へと進まれています。

 

長嶋茂雄さん(脳梗塞)

職業

プロ野球巨人元監督

診断

左大脳に中等度の脳梗塞(心原性脳塞栓)

発症時期

2004年3月(当時:68歳)

発症の原因

不整脈である心房細動が起き、心臓内にできた血栓が左大脳で詰まった4

発症時の様子

意識があり、問いかけにも応答でき、言語障害もみられていない状態

発症後の経過

・2013年5月には懸命なリハビリを経て表舞台に復帰し、元プロ野球選手の松井秀喜さんとともに国民栄誉賞を授与4

・2022年9月(当時:86歳)に脳出血を起こして緊急入院。脳内に出血が起こったものの、早期治療をおこなったため重篤化には至らず、意識ははっきりしていた5

・2024年現在(88歳)、治療とリハビリを続けている。6月には東京ドームでおこなわれた巨人の全体練習を視察し、車椅子に乗りながら身振り手ぶりで指導している姿がみられている。6

 

河合美智子さん(脳出血)

職業

女優

診断

左脳出血

発症時期

2016年8月(当時:48歳)

発症の原因

塩分の摂りすぎによる高血圧が関係

発症時の症状

・簡単な計算ができなくなる

駐車場に車を停めようとした際、駐車場が2つ並んでおり、どちらが安いか計算できなかった。

・右半身の麻痺

床に座って稽古を見ていたとき、立ち上がろうとするも、右足に力が入らずにそのまま尻もちをついてしまった。そのまま体が固まり、動かせなくなった。

・ろれつが回らなくなる

救急車で駆けつけた救急隊員に症状を説明しようとするも、ろれつが回らない状態でうまく説明できなかった。物忘れや注意力が散漫になるといった症状がみられた

7)

発症後の経過

・発症後は治療とリハビリを重ね、2024年現在(56歳)女優・タレント業に復帰。

・現在も右半身に麻痺が残り、軽微な記憶障害や言葉が出てきにくいといった言語障害がみられる8

 

KEIKOさん(くも膜下出血)

職業

音楽グループglobeのヴォーカリスト

診断

くも膜下出血

発症時期

2011年10月(当時:39歳)

発症時の様子

救急車で病院へ搬送されたあと、5時間以上に及ぶ手術を受け、目を覚ましたときには1週間以上が経過していた9

発症時の症状

・物忘れや注意力が散漫になるといった症状がみられた

・意識が回復したあとは、数年間の記憶が抜け落ちており、「住所を書いてください」と言われて書いたのは、当時住んでいた東京の住所ではなく、出身地である大分の住所だった9

・年齢を聞かれた際には17歳と伝えてしまうほど、脳がタイムリープしたような感覚になっていた

9

発症後の経過

・長年の治療とリハビリ期間を経て、2022年には十数年ぶりとなる新曲をリリース

・2023年からは地元・大分でラジオのレギュラー番組をスタート

9

 

脳卒中の予防・早期発見のために

脳卒中の危険因子は、不整脈(心房細動)・動脈硬化・高血圧・糖尿病・喫煙・肥満などです。とくに高血圧が予防できれば、日本人の脳卒中患者の数を約40%減らせると言われています。10

 

脳卒中を予防するためには生活習慣の見直しを図り、頸動脈エコー検査やMRI検査を受け、早期発見を心がけることが重要です。頸動脈エコー検査を受けると、脳卒中の危険因子となる動脈硬化の早期発見につながります。11

 

MRI検査は脳の断面に加え、縦や斜めの角度で撮影できるため、脳に関する詳細な情報を把握することが可能です。たとえば、動脈瘤や血管異常の早期発見、現在起こっている脳出血やくも膜下出血の確認につながります。

 

脳卒中と関連の深い生活習慣病管理や予防について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 

まずはMRI検査・頸動脈エコー検査で早期発見へ

大阪市城東区のいわた脳神経外科クリニックでは 、頸動脈エコー検査に対応しています。症状がある場合の検査は保険適用となります。

 

当院のMRIは従来の物に比べて検査音が低減されており、トンネルの長さも短く明るい設計です。検査にあたって、ご心配のある方は事前にご相談ください。

 

予防を目的としたMR検査・頸動脈エコー検査は自費診療となります。

 

 

参照リンク

 

1)e-Start 政府統計の総合窓口|令和2年患者調査

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450022&tstat=000001031167&cycle=7&tclass1=000001166809&tclass2=000001166811&tclass3=000001166812&tclass4=000001166813&cycle_facet=tclass1&tclass5val=0h 

2)厚生労働省|2022(令和4)年 国民生活基礎調査

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html 

3)厚生労働省|令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/index.html 

4)朝日新聞デジタル|長嶋さんは中程度の脳梗塞 右半身に軽いまひ 病院発表

http://www.asahi.com/special/nagashima/TKY200403050184.html

5)日本経済新聞|長嶋茂雄さん脳出血で入院 早期に処置、意識はっきり

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL070CK0X00C22A9000000/

6)Yahoo!ニュース|巨人 長嶋茂雄終身名誉監督が東京ドームを電撃訪問 全体練習を視察 岡本和真には熱血指導「みんなしっかり振っている」

https://news.yahoo.co.jp/articles/cf93285dbfc51705a3d93b4e6974fdd6b627049b

7)フジテレビ|その原因、Xにあり!河合美智子を襲った病

https://www.fujitv.co.jp/sono_x_niari/backnumber170421.html

8)Yahoo!ニュース|オーロラ輝子の河合美智子が「あさイチ」生出演 脳出血経て元気な姿も「記憶障害、言語障害も」と告白

https://news.yahoo.co.jp/articles/4cb0cfff447fe2938bc52f7aa14aab2d28519020

9)NEWSポストセブン|【独占告白】globe・KEIKO、くも膜下出血から12年「異変が起きた日」と「抜け落ちた数年間の記憶」

https://www.news-postseven.com/archives/20230428_1864606.html/2

10)Akihiko Kitamura, Kazumasa Yamagishi et al.Impact of Hypertension and Subclinical Organ Damage on the Incidence of Cardiovascular Disease Among Japanese Residents at the Population and Individual Levels – The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS) .Circ J 2017 81(7)p.1022-1028

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/81/7/81_CJ-16-1129/_article 

11)厚生労働省|e-ヘルスネット 頸動脈エコー検査

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-097.html

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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