「頭が割れるように痛い」

このような症状は脳卒中のサインかもしれません。重症化すると、脳や全身に深刻な影響を及ぼし、命にかかわる場合もあります。

 

本記事では、頭痛と脳卒中の関係性や発症の原因、検査について解説します。この記事を参考に、いつもの頭痛とは違う頭の痛みに気づき、早期の対応が取れるようにしておきましょう。

 

頭痛と脳卒中にはどのような関係がある?

脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりして脳の細胞が壊れ、身体の麻痺や言語障害、認知機能低下などのさまざまな症状が現れる病気です。1)脳卒中は以下の種類に分けられ、頭痛の原因になることがあります。

 

・くも膜下出血

・脳出血

・脳梗塞

 

それぞれの脳卒中で見られる頭痛の特徴や頭痛以外の症状、発症時のサインをまとめました。該当する症状がある場合は、すみやかに医療機関を受診してください。

 

くも膜下出血

 

頭痛の特徴

突発的に起こる激しい頭痛が特徴です。

雷鳴頭痛(突然激しい頭痛に襲われ、1分未満にピークに達し、5分以上持続する頭痛)2)とも呼ばれ、「今まで経験してきたなかで最もひどい頭痛」と表現する患者さんもいるほどに強い頭痛です。

頭痛以外の症状

頭痛に加えて、めまい、吐き気・嘔吐、意識消失を伴う場合が多く、それ以外に、複視(物が二重に見える)も起こりやすいのが特徴です。3),4)

発症時のサイン

くも膜下出血のおもな原因は脳動脈瘤の破裂です。

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血では、4~20日前に頭痛のサインが約半数以上に見られるという報告があります。3)

また、先天的な血管奇形である脳動静脈奇形も原因の一つです。

脳動静脈奇形の血管が原因の場合は、安静時約25%、活動時約40%の割合で発症すると言われています。3寝ているときに頭痛で目覚める場合や日中の作業・スポーツ時などに発症する場合があります。

 

脳出血

 

頭痛の特徴

さまざまな程度の頭痛がみられます。

頭痛以外の症状

吐き気・嘔吐などの脳圧亢進による症状、半身の麻痺・感覚障害、ろれつが回らない、理解・記憶の低下など、脳の障害された部位による症状、意識障害などが起こるのが特徴です。2

発症時のサイン

脳内の血管が破裂し、脳内に血腫(血の溜まり)ができた状態です。おもに慢性の高血圧によって細い動脈がもろくなり、破裂して出血することで発症します。4

日中活動時の発症が多く、高血圧を抱える人が日中の作業や仕事中に頭痛を訴えたときは注意が必要です。3

 

脳梗塞

 

頭痛の特徴

国内外の報告による脳梗塞で頭痛がともなう割合は、9~42%と幅があります。5)

脳血管障害で入院した患者222例を対象にした国内における調査では、くも膜下出血100%、脳出血46.1%に比べて少ないものの、脳梗塞患者の28.3%に頭痛がともなったとあります。5)

頭痛以外の症状

脳梗塞でみられる症状は、脳血流が阻害され、脳が壊死した部分によってさまざまです。

半身麻痺や言語障害、感覚障害、、記憶障害、構音障害、めまいなど多岐にわたります。3

発症時のサイン

脳梗塞発症の前に頭痛がみられる頻度は9%と言われています。3)

一過性虚血発作(一時的に脳血流が低下し、言葉が出にくくなる・物が二重に見える・手が動きにくい・しびれるなどの症状が出る)が起こると脳梗塞を起こす可能性が高いとされています。

心房細動を頻回に起こす場合は、心原性脳塞栓症に注意が必要です。

脳梗塞発症前に見られる頭痛の中には脳血管に関係がある頭痛以外の頭痛も含まれると言います。5)片頭痛と脳梗塞の関連についてはの記事をご確認ください。

 

脳卒中の種類や原因となる生活習慣病についてはで詳しく説明しています。

 

脳卒中の早期発見の重要性

 

脳卒中は「がん」「心疾患」「老衰」に次いで、日本人の死因4位(男性3位、女性4位)であり、死に至ることも多い病気です。6

 

身体の麻痺や言語障害、認知機能の低下などの後遺症が残り、日常生活に介助を要するケースも多くなります。実際に重度の介護が必要な要介護4.5の原因疾患第1位は脳卒中です。7)

 

重症化を予防し、命を守るためには早期発見が極めて重要です。

以下の「顔」「腕」「言葉」の症状がみられる場合は、すぐに救急車を呼びましょう。8

・顔:顔の半分が下がっている、笑顔がうまく作れない

・腕:片側の手に力が入りにくい、両腕を上げると片腕だけ下がる

・言葉:言葉が出にくい、話が理解できない、ろれつが回らない

 

脳卒中を疑う頭痛がみられたときに受けるべきMRI検査

 

脳卒中を疑う頭痛がみられた場合は、脳の異常がないか確認するために、MRI検査を受ける必要があります。

 

MRI( Magnetic Resonance Imaging)は磁気の力を活用し、頭や体の断面図を撮影する検査です。外からは見えない脳の詳細な情報が把握でき、CTではあいまいな点も多い発病後間もない脳梗塞の病巣を検出しやすいため、脳卒中の早期発見に有用です。9)MRAにより、頭蓋内の脳血管の情報も得られます。

 

MRIはX線を使わないため、放射線被ばくのリスクがありません。筒の中に寝た姿勢で入るだけで検査を行えますが「体内に金属が入っていない」「閉所恐怖症でない」「姿勢を保てる」などの検査を受けるための条件もあります。(心配のある方は当院まで一度ご相談ください。)

 

気になる頭痛の症状はMRI検査、頸動脈エコー検査を

 

当院ではMRI検査、頸動脈エコー検査に対応しています。気になる頭痛の症状がある方はご検討ください。

 

MRI検査当日の診断に対応

 

吐き気やめまい、目のかすみやしびれをともなう頭痛など、脳卒中を疑う頭痛がみられたら、すみやかなMRI検査による早期発見・早期治療が重要です。

 

当院では、気になったときにすぐに診断できるよう、しています。(症状があってMRI検査をおこなう場合は保険適用となります。)

・検査時間:約15分

・検査費用:約7,000円(保険適用3割負担費用)

 

緊急処置が必要な場合は、提携病院とスムーズに連携する体制を整えています。

※顔や身体の麻痺、言葉の症状が出ている場合は救急車を呼んでください。

 

 

脳卒中予防に頸動脈エコー検査も

 

脳に血液を送る首の動脈を視覚化できる頸動脈エコー検査は、脳卒中のリスクとなる動脈硬化の早期発見につながります。内膜中膜複合体肥厚度(動脈壁の内膜と中膜を合わせた厚さ)を計測することで、動脈硬化の進行状況を的確に把握することが可能です。10

 

当院では、予防医療の一環として頸動脈エコー検査にも対応しています。(症状がある場合は保険適用です)頭痛が続く、高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病を指摘されたことがある方はを受け、脳卒中を予防しましょう。

 

 

※予防を目的としたMRI検査、頸動脈エコー検査は自由診療となります。

 

参照リンク

1)厚生労働省|e-ヘルスネット|脳血管障害・脳卒中

脳血管障害・脳卒中

2)日本頭痛学会|国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版

https://www.jhsnet.net/kokusai_new_2019.html

3)厚生労働省|脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1203-5g.pdf 

4)厚生労働省|脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000807245.pdf

5)後藤達範 脳梗塞急性期における頭痛の検討 1984 51(6)p.748-757

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnms1923/51/6/51_6_748/_pdf

6)厚生労働省|令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/index.html

7)厚生労働省|2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html

8)American Stroke Association. F.A.S.T materials.

https://www.stroke.org/en/help-and-support/resource-library/fast-materials

9)木村和美 脳梗塞急性期の診断と治療 臨床神経 2008 48 p.866―870

https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/048110866.pdf

10)厚生労働省|e-ヘルスネット 頸動脈エコー検査

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-097.html

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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