かくれ脳梗塞とは?見えない脳の危険に注意

 

かくれ脳梗塞とは、脳の細い血管が閉塞することで発生する脳梗塞の一種であり、その名の通り、症状が現れないため、知らず知らずのうちに進行してしまう危険性があります。脳の血管が詰まると、通常は脳梗塞の症状が現れることが一般的です。例えば、片側の手足が麻痺したり、言葉がうまく出てこなくなったりすることが多いですが、かくれ脳梗塞は、症状が出ないため、そのまま見過ごされることが少なくありません。

 

では、なぜかくれ脳梗塞が症状を示さないのでしょうか?その理由は、血管の閉塞が脳の非常に細い部分、つまり末梢の血管で起こるためです。通常の脳梗塞では、比較的太い血管が閉塞することによって、広範囲の脳組織が酸素不足に陥り、その結果として目に見える症状が発生します。しかし、かくれ脳梗塞の場合、影響を受ける脳組織が非常に限られているため、症状が現れないのです。

 

このようなかくれ脳梗塞は、MRI検査などの高度な画像診断技術を使用しない限り、発見されることはほとんどありません。しかし、実際に調査されたデータによれば、かくれ脳梗塞は驚くほど一般的な現象です。例えば、30歳代では5人に1人、40歳代では4人に1人、50歳代では3人に1人、60歳代では2人に1人、そして70歳以上ではほぼ全員にこの現象が見られると言われています。

 

 

かくれ脳梗塞のリスクを軽視してはいけない

 

かくれ脳梗塞は無症状であるため、発見が遅れがちですが、そのまま放置すると深刻な健康リスクを伴う可能性があります。症状がないからといって、安心して放置するのは非常に危険です。かくれ脳梗塞が発生しているということは、脳内の血管がすでに何らかの形でダメージを受けている証拠です。この状態を放置することで、次のような深刻な問題が発生するリスクがあります。

 

本格的な脳梗塞のリスクが高まる

かくれ脳梗塞がある人は、通常の脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。これは、既に血管にダメージがあるため、さらなる血管の詰まりが発生しやすくなるからです。脳梗塞が発生すると、脳の重要な部分にダメージが及び、命にかかわる状態に陥る可能性があります。

 

脳出血のリスクが増加する

かくれ脳梗塞を放置しておくと、血管が弱くなり、最終的には破裂して脳出血を引き起こす可能性もあります。脳出血は、血管が破れて血液が脳内に流れ込む状態であり、脳梗塞以上に致命的な結果を招くことがあります。

 

認知症のリスクが高まる

脳内の小さな梗塞が増えると、認知機能が低下し、最終的には認知症に発展することがあります。脳の特定の領域が繰り返しダメージを受けることで、記憶力や思考力に影響が及び、日常生活に支障をきたす可能性があります。

 

かくれ脳梗塞を予防するために

かくれ脳梗塞を防ぐためには、その危険因子を理解し、これらの因子を積極的に管理することが重要です。かくれ脳梗塞の主な危険因子には以下のようなものがあります:

  • 脳卒中の家族歴:家族に脳卒中を経験した人がいる場合、そのリスクが高まります。
  • 高血圧:血圧が高いと、血管にかかる負担が大きくなり、動脈硬化や脳梗塞のリスクが高まります。
  • メタボリックシンドローム:内臓脂肪型肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症が重なる状態であり、脳梗塞のリスクが非常に高いです。
  • 糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つきやすくなり、動脈硬化や脳梗塞のリスクが高まります。
  • 高コレステロール血症:血中のコレステロールが高いと、動脈硬化が進行しやすくなります。
  • 頸動脈の動脈硬化:頸動脈が硬くなると、脳への血流が悪化し、脳梗塞のリスクが増加します。
  • 慢性腎臓病:腎臓の機能が低下すると、血圧が上昇し、脳梗塞のリスクが高まります。
  • 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が止まることで、血圧が上昇し、脳梗塞のリスクが高まります。
  • 不整脈(特に心房細動):心房細動があると、血栓が形成されやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を引き起こす可能性があります。

これらの危険因子の多くは、生活習慣に密接に関連しています。そのため、かくれ脳梗塞を予防するためには、次のような健康的な生活習慣を取り入れることが不可欠です。

 

規則正しい生活を送る

規則正しい生活リズムを保つことは、血圧の安定や体調管理に非常に重要です。特に、十分な睡眠をとり、ストレスを減らすことが大切です。ストレスや睡眠不足は血圧を上昇させる要因となるため、脳梗塞のリスクを高めます。

 

適度な運動を続ける

定期的な運動は、血圧のコントロールや心血管系の健康維持に役立ちます。ウォーキングや軽いジョギング、スイミングなどの有酸素運動は、心臓と血管の機能を改善し、動脈硬化の進行を遅らせる効果があります。

 

バランスの取れた食事を心がける

食事の面では、塩分や脂肪の摂取を控え、野菜や果物、魚などをバランスよく摂取することが推奨されます。特に、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を豊富に含む魚は、血液の流れをスムーズにし、血栓の形成を防ぐ効果が期待できます。

 

禁煙と節酒を心がける

喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を進行させる大きな要因です。また、過度の飲酒も血圧を上昇させるため、かくれ脳梗塞のリスクを高めます。禁煙と適度な飲酒を心がけることで、脳梗塞のリスクを減少させることができます。

 

定期的な健康チェックを受ける

自分の健康状態を把握するために、定期的な健康チェックを受けることは非常に重要です。特に、血圧や血糖値、コレステロール値の測定を定期的に行い、異常があれば早期に対処することが必要です。

 

かくれ脳梗塞が見つかった場合の対処法

かくれ脳梗塞がMRIやその他の検査で発見された場合、次のような精密検査と治療が必要になります

 

脳血管および頸動脈の評価

かくれ脳梗塞が見つかった場合、まずは脳血管や頸動脈の状態を詳細に評価することが重要です。MRA(磁気共鳴血管造影)や頸動脈エコーを使用して、血管の狭窄や閉塞がないかを確認します。これにより、さらなる脳梗塞のリスクを予測し、必要な対策を講じることができます。

 

抗血小板薬の内服

血管の狭窄が確認された場合、抗血小板薬の内服が推奨されることがあります。抗血小板薬は、血液中の血小板が集まって血栓を形成するのを防ぐ薬です。これにより、血管内の血液の流れをスムーズに保ち、脳梗塞の発生を予防します。

 

ステント留置術

頸動脈や脳血管の狭窄が進行している場合、ステント留置術が検討されることがあります。ステントは、狭窄した血管を広げるために使用される金属製のチューブで、血管内に挿入されて血流を改善します。これにより、脳への血流が改善され、脳梗塞のリスクが減少します。

 

心電図・ホルター心電図の評価

かくれ脳梗塞が発見された場合、心臓に不整脈がないかを確認することも重要です。特に、心房細動があると、心臓内で血栓が形成され、それが脳に飛んで脳梗塞を引き起こす可能性があります。心電図ホルター心電図で心臓の状態を評価し、必要に応じて抗凝固薬の内服を開始することが推奨されます。

 

抗凝固薬の内服

心房細動が確認された場合、抗凝固薬の内服が必要になることがあります。抗凝固薬は、血液を「サラサラ」にして血栓が形成されるのを防ぎ、脳梗塞の予防に役立ちます。これにより、脳内への血栓の流入を防ぎ、さらなる脳梗塞のリスクを大幅に減少させることができます。

 

 

まとめ

かくれ脳梗塞は症状がないため見逃されやすいものの、放置すると重大な健康リスクを伴う可能性があります。定期的な健康チェックと危険因子の管理を徹底することで、かくれ脳梗塞を予防し、健康な生活を維持することが可能です。もしかくれ脳梗塞が発見された場合には、早期に適切な精密検査と治療を受けることが重要です。適切な対策を講じることで、深刻な脳梗塞や脳出血、さらには認知症のリスクを大幅に減少させることができます。あなたの脳の健康を守るため、今すぐ行動を開始しましょう。

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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