頭痛疾患に対するスティグマ

 

スティグマ」とは「汚名、偏見、印」などと訳されることが多く、近年、医療や福祉分野で患者や疾患の置かれた状況を議論する際に多く用いられます。

 

頭痛に対するスティグマは患者の社会生活や頭痛医療の推進に大きな影響を与えております。

片頭痛患者さんは、家庭でも職場でも自らの疾病負担について理解されていないと感じています。
データをご紹介すると、片頭痛患者さんに、配偶者が自分の頭痛について理解しているかと質問したところ、43.9%の方で理解されていないと感じています。

 

また、片頭痛患者さんは、職場では自身の痛みよりも仕事を優先する傾向がある一方、仕事の継続やキャリアアップを諦めてしまう人も少なからずいます。

 

2016年の医療保険会社の調査によると、
事業主はわずか22.1%しか片頭痛が仕事を休むのに十分な深刻な理由であると考えておらず、うつ病、不安障害、ストレス、インフルエンザ、または一般的な風邪より深刻な理由と考えている雇用者は少数でした。この結果からも片頭痛患者さんの苦しみについて理解されていない世の中であることが理解できます。

 

このような事例が片頭痛患者さんが抱えるスティグマになります。

このような状況にもかかわらず、片頭痛をはじめとした一次性頭痛は、罹病率と支障度の高さに比較して十分な医療資源を享受できておりません。
その原因として、頭痛疾患におけるスティグマが関与している可能性が示唆されております。

 

これらのステイグマは就労不能と強く相関しており、慢性片頭痛患者では就労能力が低く、てんかんや反復性片頭痛よりもスティグマが大きかったと報告されております。

医療では、片頭痛の標準的な診断と治療法がまだまだ医療機関に浸透しておらずで脳に異常がないで治療終了ということもあります。しかし、日本でも頭痛専門医制度があり、専門の先生方が担当する頭痛外来を受診することが最適と思われます。

 

 

 

 

 

頭が痛いだけが片頭痛じゃない。
(日本イーライリリープレスリリースより抜粋)

 

さまざまな病気のなかでも日常生活における支障大きいとされるのが片頭痛です。

特に思春期から働き盛りの年代で片頭痛有病率が高いため、頭痛悪化による欠勤や不登校が問題であるとされています。

 

17071名の調査結果から、「頭痛に耐える・我慢する」日本人の実態が明らかになっております。

調査結果のポイントしては、

・ 1ヵ月あたりの頭痛日数が15日以上の患者は、労働遂行能力が49.9%に低下していたが、片頭痛を理由に仕事を休んだ時間は全労働時間のうち6.2%であった。

・ 片頭痛の負担は1ヵ月あたりの頭痛日数が15日以上の群で最も大きかったが、0~3日の群でも、日常生活への支障度は大きく、労働生産性及びQOL低下に及ぼす影響が大きかった

・ 回答者の 3 分の 1(36.5%)が、片頭痛の治療を求めることを躊躇していた。

国際平均では片頭痛患者の64%が日常生活において軽度以上の支障を報告したが、国別でみると日本は46%に留まった。

 

 

片頭痛は見た目にはわかりづらい症状です。本音を言えず我慢しがちな当事者の辛さがあります。

それをすぐそばで見守る人たちのもどかしさ。

日本では約10人に1人といわれる片頭痛の多様な痛みに目を向けてみませんか。

患者さんの負担を知ることが片頭痛患者さんに共感できる第1歩です。

 

 

 

 

 

⚫︎「ヘンズツウかるた」のご紹介

 

 

 

 

片頭痛は見た目にはわかりにくい頭痛です。

その支障が一人でも多くの人に理解されるように事者や周囲の方の想いをかるたの形で表現されています。

社会全体が片頭痛を正しく理解する「見える化ツール」として「ヘンズツウかるた」が登場しました。

興味を持たれた方は「こちら」をクリックしてみてください。

 

 

 

 

 

⚫︎頭痛を取り巻く社会課題

片頭痛は、ある時突然に頭痛の発作が出たり、発作を繰り返したりすることを特徴とする神経学的な疾患のひとつです。有病者数は日本では約 840万人とされており、男性 3.6%、女性12.9%と高い有病率であり、日常生活に支障をきたす疾患の第2位でもありますが、痛みや支障が見えづらいことで患者さんは疾患のつらさに加え、周囲から理解を得られづらいという社会的なつらさも抱えています。

 

仕事に支障をきたすほどの症状があっても、それを職場で周囲に伝えることなく、我慢して勤務を継続する傾向があり、プレゼンティーイズム(出勤しているが、心身の健康上の問題で生産性が落ちている状態)と言われるこの状態は、個人のウェルビーイング低下だけでなく、組織の見えない労働損失でもあります。「片頭痛」による労働障害などを原因とした経済的損失は日本で年間約3,000億円とも言われています。

 

約 17,000人の片頭痛当事者を対象に行った国内初の大規模横断的疫学調査と、第20回国際頭痛学会(2021年9月)にて発表した国際調査との比較では、日本の片頭痛事者の「1人で抱え込み我慢する“ワンオペ頭痛”」の実態が明らかになるなど、日本における片頭痛医療の満たされていない患者ニーズも明らかになりました。

最近では経済産業省が推進する「令和3年度 健康経営度調査」のヘルスリテラシー向上のための教育の対象項目に「片頭痛・頭痛」が追加されるなど、「ただの頭痛」と軽視されていた片頭痛に対する認識が少しずつ変化してきています

 

 

いかがだったでしょうか?

片頭痛患者さんの日常生活の支障を理解することは非常に大切なことになります。

最近では日本の企業である富士通が、国際頭痛学会世界患者支援連合(GPAC)から、頭痛対策プログラムの世界的リーダー企業に認定され、2022年3月2日、認定証を授与されております。

頭痛による支障度の正しい理解と、改善に向けた職場や従業員の教育、頭痛に悩んでいる従業員への頭痛対策プログラムを開発されたことが評価された形になります。

少しづつですが、片頭痛患者さんを取り巻く環境に変化はみられております。

 

片頭痛で死ぬことはありませんが、患者さんのかけがえのない時間、人生を奪っていることは確かです。
片頭痛患者さんに対して出来ることを考えてみましょう。

 

参考文献(1)Silberstein SD, et al:Neurology.2016; 87(5): 529-38.

参考文献(2)Chou DE, et al:Cephalalgia. 2019: 39: 3-14.

 

 

 

 

片頭痛のある人に適切な医療の実現を

 

今回は『上司必見!『片頭痛はサボりではない』頭痛持ちの気持ちを理解する』というテーマで解説しました。

 

当院では”頭痛専門外来”をおこなっており、閃輝暗点のある片頭痛を含む様々な種類の頭痛に対し、エムガルティをはじめとしたCGRP製剤など、頭痛をしっかりと治すために最新治療の提供に注力しています。エムガルティ(CGRP製剤)の処方実績では大阪で1位・全国で3位の実績を誇っており、患者さんが新たな治療に触れる機会損失にならないよう、早期治療・早期改善に努めています。

 

頭が痛くてやっとの思いで病院やクリニックに行ったのに、「市販でも買えるようなロキソニンを処方されて終わり」といった経験はありませんか?

当院では様々な薬を使って効果判定をしながら、次の選択肢を提案することで”頭痛難民”の患者さんを救うべく日々診療をしております。

 

あなたも『頭痛から卒業』を目指して一緒に治療しませんか?

 

 

 

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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